この恋は、『悪』くない。
「樽崎くん、食べれる?
お粥できたよ」
樽崎くんの部屋まで運んだ
「うん、ありがと…」
樽崎くんが
ベッドから起き上がった
「熱いから気を付けてね」
「沙和食べさせてくれないの?」
「え…」
「フ…そんな驚かなくても…
だって、彼女じゃん」
そっか…
彼女じゃん
私
嬉しくなった
スプーンにとって
フー…フー…
「ハイ…」
樽崎くんの口に運んだ
彼女っぽい?
「熱くない?」
「うん…」
樽崎くんの彼女になって
幸せだなって思う
フー…フー…
「ハイ…しょっぱくない?」
「うん…いい塩加減」
「私、味見してなくて…」
フー…フー…
次のスプーンを
樽崎くんの口に運んだら
ーーー
樽崎くんの口は
スプーンを通り越して
私の唇に触れた
今のは…
また
キスじゃないのかな?
「沙和…」
名前を呼ばれて
ゆっくり
樽崎くんと目を合わせた
「ん?…熱かった?…しょっぱかった?」
「熱い…」
「ごめん!火傷したかな?」
「うん、したかも…」
「どーしよ…」
ドキドキする間もなく
慌ててしまった
「フ…沙和かわいいな」
「え?」
「オレの彼女かわいいな…って…」
「火傷、大丈夫?」
「わかんね、見て…口の中…」
樽崎くんが口を開けた
覗こうとしたら
ーーー
また
からかわれてる?
私
「沙和…好きだよ」
ん?
なんだ
からかわれてないんだ
キスされたんだよね?
私
「うん…
私も、好きだよ」
「よかった
沙和、こわがらせたくねーな…って
いつも考えてて…」
「ん?私?」
「うん、だっていつもオレが近付くと
離れんじゃん
オレのこと、こわそーにしてるから…
…
さっきも振り払われたし…
一応、病人なのに…」
「あ!ごめん!
そんな気なくて、私…」
「じゃーこわくない?」
「うん…こわくない、よ…」
「ホント?
ウソっぽい!沙和」
「ただ、ちょっと…
恥ずかしかったり…
照れてしまって…」
「うん…
それはオレも一緒だから…
…
だから…
今度は沙和から…
…
オレ、さっきしたから…
…
スゲー頑張ったんだけど…」
樽崎くんが目を閉じた
んー…
そーゆーことだよね?
キス
していんだよね?
「早くー
スゲー恥ずかしんだけど…」
うん
恥ずかしい
こーゆーの
恥ずかしい
「沙和は、したくなかった?」
樽崎くんの目が開いた
樽崎くん
怒ったかな?
せっかく
私のために頑張ってくれたのに…
目を閉じて
ーーーーー
樽崎くんにキスした
タイミングとか
長さとか
強さとか
めちゃくちゃ
「えっと…したかった、です」
目を開けたら
「フ…ヤベー」
樽崎くんに笑われた
「なんで、笑うの?
私も、頑張ったよ」
「うん、頑張った
…
スゲー頑張ってた
…
沙和が、かわいくて…」
「ごめん…
慣れてなくて…
緊張したし…」
「うん、オレも緊張した」
樽崎くんでも
緊張するんだ
「頑張らなくてもできるように
なったらいいな…」
樽崎くんが独り言みたいに言った
そんな樽崎くんに
また
キスしたくなった
ーーー
「下手だけど…ごめんね…
でも、好きだよ」
「うん…沙和…」
ーーーーー
「オレも好き」
樽崎くん
私も火傷したかもしれない
うん
いい塩加減だね