あの日溺れた海は、
その声の主は、同じ学年のギャル達だった。話しかけられないように、ワークに集中してるふりをすると「あー、確か井上さん?だよね。」と先程の声からは想像もつかないような低い声で運悪く話しかけられた。
はは…と苦笑いを返すと、「藤堂先生知らない?」と素っ気ない声で聞かれた。
本棚の影にいます。と本当のことを言おうかとも思ったけど、あの先生の強張った顔は何か理由があるのかと思って、それに、先生とこの子達が一緒にいるところを見るのが嫌で、すっとぼけた声で「見てないよ。」と答えた。
ギャル達は「そう。」と答えると意外と呆気なく図書室を後にした。
完全に図書室から姿を消したのを見送ると、わたしは先生の方へ視線を送った。
やれやれ、と言わんばかりかの顔で本棚の影から出てくると、ふう、とため息をついた。
「大変、ですね。」
同情の視線を向けると、「最近度を超えてしつこくてね。辟易してるんだ。」と眉を寄せながらそう言った。