エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 私は強引に反対側を向き、稀一くんに背中を向ける。すると背中から包み込むようにして抱きしめられた。

「本当だ。愛している、誰にも渡さない」

 真剣な声色に彼が今、どんな表情をしているのか見なくても想像ができた。

「うん、私も」

 胸が締め付けられ、やっぱり私も彼が好きなんだと改めて感じる。そんな彼に愛されて私は幸せだ。

「稀一くん、子どもにまでやきもちは妬かないでね」

「それは保証できないな」

 わざとあっけらかんと話題を振ったら、さらりと返され目を見張った。思わず振り向こうとすると、その前に回されている腕の力が強められる。

 彼の大きな手のひらが腹部に添えられた。

「けれど、きっと日奈乃に似て可愛いんだろうな」

 優しい口調になんだか泣きそうになった。もしもこの子を妊娠しなかったら、すれ違ったまま離婚を申し出て、お互いに離れていたかもしれない。

 子どもを授かったから尚更、これからは稀一くんとたくさん話をして気持ちを伝えあっていこう。

 稀一くんが電気のリモコンに手を伸ばし操作して、部屋の照明が落とされた。ちょうどいい暗さに眠気が誘われる。

 なにより包み込む彼の体温にホッとする。やっぱり稀一くんのそばは安心するし、彼に触れられると心が落ち着く。

 それは、これからも変わらないんだ。

 明日は久しぶりに早起きして稀一くんを起こそう。

 お腹に添えられている彼の手の上に自分の手を重ね私は幸せな気持ちで目を閉じた。
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