エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 今日は主人公の同僚カップルに焦点が充てられる放送回だった。

『ねぇ、もしも好きな人ができたから私と別れてほしいって言ったらどうする?』

 年上の妻が夕飯の食器を並べながら年下の夫に問いかける。夫役は今人気急上昇中の若手俳優だ。彼はあからさまに不機嫌そうな顔になった。

『なんだよ。結婚してまだ二週間なのに?』

『あなたと結婚する前から好きだった人がいたの』

 妻の台詞に夫は硬直する。すっかり物語に入り込んだ私はハラハラと手に汗握って彼の反応を待った。

『俺は物分かりが悪いから、はい、そうですかって手放せない。なにを言われても絶対に別れないし、他の男に渡さない』

 これは、おそらく今回の一番の見せ場と言っても過言じゃない。真剣な彼の演技に今、SNSでは感想が飛び、交い大騒ぎになっているだろうな。

 対する妻役の彼女は複雑な表情を見せつつ最終的には微笑んだ。彼女の心情はどういったものなのか。そこでコマーシャルに切り替わる。

 私は釘付けになっていた視線をテレビからはずす。ドラマとはいえあんなふうに真正面から自分の気持ちを伝えてもらえるなんて羨ましい。

 私は完全に夫役の彼に感情移入して応援する気持ちが芽生えていた。あの夫婦はどうなるんだろう。

 そのときバスルームから出てきた稀一くんがリビングに姿を現し、私は慌ててテレビの電源を消した。

「見ていたんじゃないのか?」

 彼の疑問は当然だ。わずかに髪を湿らせ私と同じくパジャマ姿でこちらにやってくる。
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