エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 しょうがない。私は稀一くんみたいにきっと冷静に相手の言い分なんて聞けない。だって。

「稀一くんのことが好きだから」

 まっすぐに気持ちを伝える。刹那、耳鳴りがしそうなほどの沈黙が私たちを包んだ。先に動いたのは稀一くんで、彼は私のおでこにこつんと自分の額を重ねる。  

「心配しなくてもそんな日は来ない」

 視界が暗くなり彼の瞳に捕まる。頬から伝わる温もりが全身に伝わっていく気がした。

「俺の奥さんは日奈乃だけだ」

 そのまま唇を重ねられ、おもむろに目を閉じて受け入れる。

 いつもなら軽く口づけて一度終わるのに、今はなかなか解放されない。微妙に唇の角度を変えながら長くて甘いキスが続けられる。

 酸素不足も相まって頭がくらくらし、根負けして息をしようと薄く唇を開けると舌を滑り込まされ、より求められる。

「んっ……んん」

 深い口づけを交わした経験はある。さっきだってそうだった。けれど、こんなふうに性急に求められるキスは今までにない。

 反射的に抵抗を試みるも稀一くんの右手は私の顔に添えられ、左手はいつのまにか腰に回されていた。

 ここまで強引な稀一くんは初めてで自分の中で戸惑いが起こる。けれど嫌な気持ちはまったくない。

 舌先や歯列を舐め取られ、ゆるやかに口内を蹂躙され思考力が落ちていく。

「ふっ、ん……んぅ……」

 自身のくぐもった声や脳に直接響く水音が羞恥心を増幅させる一方で、じりじりと焦げるような燻りがの私の中で存在を主張していく。
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