エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 嬉しくてそばまで寄ると不意に抱きしめられた。

「会いたかった。こんなに早く帰りたかったのは初めてだよ」

 久しぶりに直接聞く稀一くんの声に目を細める。回される腕の感触、懐かしい香り。ああ私、やっぱり彼が大好きなんだ。

 しばらく抱き合っていると、稀一くんがそっと私の頬に手を添え、顔を覗き込んできた。

「ちゃんと食べていたのか? 痩せた気がする」 

「そ、そう? ちょっとこの機会にダイエットしてみたの」

 彼の指摘にドキリとする。あまり食べない、正確には食べられない日が続いた自覚はあった。

 質問に答えず笑顔で返すと稀一くんは真剣な顔で私を見つめてくる。

「日奈乃にダイエットは必要ないだろ。むしろもっと肉がついてもいいくらいだ」

「稀一くんはそういう人が好みなの?」

 ニューヨークにはきっと肉つきがよくてグラマラスな美女が多いんだろうな。そうではなくても、彼の周りには綺麗な人が多いから……。

「好みの問題じゃない。日奈乃を見て言っているんだ。他は関係ない」

 強く言いきられ、目を丸くする。そのまま顔を近づけられ察した私は受け入れるように目を閉じた。唇から伝わる温もりに心臓が早鐘を打ち出す。久しぶりのキスは甘くて長い。

 そっと唇が離れ、稀一くんはおでこをこつんと重ねてきた。

「結婚したんだ。日奈乃以外はどうでもいいよ」

 心臓が跳ね上がる。いつもなら幸せで満たされるはずなのに、今は純粋に喜べなかった。ひとまず稀一くんに着替えて休むように勧める。
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