エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 一段落して、稀一くんの分だけコーヒーを入れる。彼のお土産を披露するという形で私たちはソファに並んで座った。

 左隣に座る稀一くんは私へのお土産を丁寧にテーブルの上に並べていく。その量は予想以上に多かった。

 ニューヨークの有名な美術館の作品をモチーフにしたエコバッグやポストカード、ニューヨーク発の世界的ブランドのコスメセット、日本でも名の知れた高級レストランで使われているコンフィチュールのセットにお菓子など。

 稀一くんが留学中のときに、私が美味しいと気に入ったお土産を今回も買ってくれている。こういうところは本当にそつがない。

「稀一くん、私にこんなに買ってきて後の人の分はどうなってるの?」

 彼は他にもお土産を配らなくてはならない人がたくさんいるはずだ。

「適当にカタログで選んだのを国際便で郵送してもらう段取りになっている」

 稀一くんは私の心配をよそに何食わぬ顔で答えた。あまりの扱いの差に、それはそれでどうなのかと心配になる。

 稀一くんは私の頭にそっと手を置いた。

「ひなが喜ぶ顔が見たかったんだ。妻を最優先してなにが悪い?」

 余裕たっぷりな彼に私は小さく笑った。

「嬉しいよ、ありがとう」

「いつか一緒に行こう。新婚旅行とはまたべつに」

 結婚式に新婚旅行。父の容体を考えて先送りにしていたけれど、稀一くんはちゃんと考えてくれていたんだ。稀一くんの左手の薬指にはめられているシンプルな結婚指輪に視線を送る。
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