エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
 仕事の忙しさは彼の方が上で、どうしても稀一くんに対し申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 稀一くんを見送った後、のろのろと身支度を整えながら鏡を見ると、ひどい顔色だった。髪も乱れて、こんな情けない姿を彼の前で晒すなんて以前では考えられない。

 用意されていたカットフルーツを何切れか口にして、仕事に向かう準備をする。

 つわりって嘔吐を繰り返すイメージだったけれど、それだけじゃないんだ。

 私の場合、常に苦みが口の中を覆って、自分の唾液さえ気持ち悪い。

 嘔吐するのはそこまで頻繁ではないが、とにかく常に強烈な吐き気が収まらず、実際に吐いたら少しは楽になるのかな、とそんな考えさえ過ぎる。 

 日中は少しつわりの症状が和らぐので、仕事はなんとかこなせている。基本的に座っていることが多いのも助かった。

 マスクを着用し、ミント系の飴をひたすら舐めてやり過ごした。

 帰宅してからはソファに突っ伏し、しばらく動けない。ここのところ料理ができておらず、食卓には買ったものばかりが並び、稀一くんが作ってくれることもしばしばある。

 稀一くんの手料理に最初は感激したけれど、次第に罪悪感に変わっていく。用意してもらってもなにも食べられないときも多々あるから。

 稀一くんは気にしなくていいって笑ってくれるけれど……。
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