エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
『日奈乃? 母さんに話したんだけれど、体調がつらくて旦那が忙しいならこちらを頼っていいからって』

「うん。私……やっぱり結人のところに行ってもいい?」

 電話の相手は結人で、先ほどの提案の返事をした。稀一くんに甘えっぱなしになるのは、やはりよくない。

『もちろん。母さんが心配してて近々連絡行くと思う』

「わかった、ありがとう。甘えさせてもらうね」 

 電話を切り、少しだけ胸につかえていたものがとれた気がする。

 これでいいんだよね。

「日奈乃」

 完全な不意打ちで名前を呼ばれて心臓が口から飛び出しそうになった。

 振り返ったらドアを開けた稀一くんが不機嫌そうな面持ちでこちらを見つめている。

「誰のところに行くって?」

 低い声で静かに問いかられ、なぜか悪いことをした気持ちになった。私はしどろもどろに言い訳する。

「あの、森崎さんから聞いて……稀一くん、今仕事が大変なんでしょ? 私、つわりで家事もあまりできなくて、迷惑かけてばかりだから、少しの間、従兄のところでお世話になろうかなって」

「迷惑なんて思ってない。夫婦なんだ。支えるのは当たり前だ」

 きっぱりと言い切り、稀一くんは前髪をくしゃりと搔く。けれど私は、彼の発言を素直に受け止められなかった。

「だから?」

 意識する前に言葉が口を衝いて出てしまい、そのままうつむいて心の中に留まっていた疑問をぶつける。
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