従者は惜しみない愛を捧げる―――流浪の落ち延び姫と双頭の獅子
   青いお空のお日様と夜空に輝くお月様
   それからきらめくお星様
   みんながあなたを守ってる
   二つの頭を持つ獅子が、近づかないよう守ってる
   だからおやすみ、アマーリア
   今宵もどうか安らかに。

 はやり病で母を失ったのは、アマーリアが五歳になる少し前のこと。

 それでも優しい父や姉、乳母や大勢の使用人のおかげで、何不自由なく幸福に育つことができた。
 そう、すべてを失ったあの時までは。

 ――絶対に忘れてはだめよ。双頭の獅子はとても危険なの。もし近づけば、あなたは命を奪われてしまうのだから。

 十九歳になった今、アマーリアが覚えているのはその言いつけと、澄んだ歌声で繰り返し聞かされた子守歌だけだった。
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