従者は惜しみない愛を捧げる―――流浪の落ち延び姫と双頭の獅子
轟音と共に、夜空に大輪の花が咲いた。
花火が上がるたびに、金や銀の光が無数の花弁となって広がり、ゆらゆら散り落ちていく。
王宮前の広場には大勢の人々が集まっているらしく、その喧騒はだいぶ離れたこの屋敷にまで聞こえてきた。昨日の夕方、レマルフィ王国に待望の王子が誕生し、国中が喜びにわきかえっているのだ。
アマーリア・ルチア・ディ・レマルフィもまた窓辺に佇み、長い金髪を一本の三つ編みにしながら、夜空を彩る花火に見入っていた。
頼りない蝋燭の明かりでも、その清楚な美しさははっきり見て取れる。
「きれい」
なめらかな白い頬を紅潮させ、澄んだ青い目を大きく見開いている様子は、どこか幼女のようにあどけない。もちろんそんな悠長な振る舞いが許されないことは、アマーリア自身、よくわかっていたけれど。
王室の慶事は、あいにくアマーリアにとっては凶事に他ならなかった。それもとびきり危険な。
ほどなく、ここを出立することになるだろう。もう何度目になるかわからない、当てのない長旅がまた始まるのだ。いや、もしかしたら今度は――。
「いいえ、アマーリア。よけいなことを考えてはだめ」
アマーリアはかぶりを振って、唇を噛み締める。
もともと少ない荷物はすでに侍女のエンマと一緒にまとめておいた。これまでの経験から、今すぐにでも旅立つ準備はできている。あとは、「彼」からの指示を待つだけだった。
花火が上がるたびに、金や銀の光が無数の花弁となって広がり、ゆらゆら散り落ちていく。
王宮前の広場には大勢の人々が集まっているらしく、その喧騒はだいぶ離れたこの屋敷にまで聞こえてきた。昨日の夕方、レマルフィ王国に待望の王子が誕生し、国中が喜びにわきかえっているのだ。
アマーリア・ルチア・ディ・レマルフィもまた窓辺に佇み、長い金髪を一本の三つ編みにしながら、夜空を彩る花火に見入っていた。
頼りない蝋燭の明かりでも、その清楚な美しさははっきり見て取れる。
「きれい」
なめらかな白い頬を紅潮させ、澄んだ青い目を大きく見開いている様子は、どこか幼女のようにあどけない。もちろんそんな悠長な振る舞いが許されないことは、アマーリア自身、よくわかっていたけれど。
王室の慶事は、あいにくアマーリアにとっては凶事に他ならなかった。それもとびきり危険な。
ほどなく、ここを出立することになるだろう。もう何度目になるかわからない、当てのない長旅がまた始まるのだ。いや、もしかしたら今度は――。
「いいえ、アマーリア。よけいなことを考えてはだめ」
アマーリアはかぶりを振って、唇を噛み締める。
もともと少ない荷物はすでに侍女のエンマと一緒にまとめておいた。これまでの経験から、今すぐにでも旅立つ準備はできている。あとは、「彼」からの指示を待つだけだった。