御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
「えっと、じゃあ、エッフェル塔を見てみたいです!」

「かしこまりました」

彼は突如手を上げて、タクシーを止めた。

「あの、タクシーで行く距離ですか? 電車とか徒歩とかではだめですか? その、あの」

「もうこの時間ですし、タクシーの方が早いので。お金の心配はしないでください」

彼はそう言って私をタクシーの後部座席に押し込み、助手席に乗り込むと「降りたい場所があれば言ってください」と斜め後ろを振り向いて言った。

タクシーはパリの街を走り、車窓から見える景色にワクワクしながら見ていると映画でよく見る橋に差し掛かった。

「ここ映画で見たことあります!」

「ええ、よく撮影なんかに使われているアレクサンドル3世橋という橋です。パリで最も美しい橋とも言われています」

橋の入り口付近にはライオンと少年の像があり、橋の末端4か所にはそれぞれ大きな石柱があり、石柱のてっぺんには黄金の女神とペガサスが立っていた。

目線の位置にはそれぞれ違う像があった。

「降りられますか?」

「いいえ。大丈夫です」

降りて見たいという気持ちもあったが、彼と一緒だとなんだかゆっくり見られない気がして断った。

車窓から、橋の街灯の足元に立つ天使やその他の装飾を食い入るように見ながら美しい橋を堪能した。
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