御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
虚しくなり私は自然と視線を下に向けていた。

人がありんこのように見える。

でもこの距離ならまだ人が人として認識できる。

人それぞれの生き方があり、人それぞれ働く理由がある。

ジェラートを持った子供を連れたあの家族はきっと美味しいものを子供に食べさせ、おしゃれな服を子供に着させ、日々を豊かにするために働いているのだろう。

ブランドバックを持ち素敵なワンピースを持った女性と歩く沢山の紙袋を持った男性は彼女を幸せにするために働き、大きなリュックサックを背負ったいかにも旅人風の彼は旅行を楽しむために働く。

私のように日々を生きるためだけに働いている人たちは一体この中にどれくらいいるのだろうか。

「意外と大丈夫なんですね」とつまらなさそうに言う彼の言葉で我に返った私はその場で腰を抜かした。

「え?」と驚く彼を私は見上げて助けを求めた。

「すみません。腰が抜けました」

私が苦笑いを浮かべながらそう言うと彼は緩んだ顔を見せて、顔を背けた。

小刻みに肩を揺らしながら、ふふふっと鼻で笑ったような音がした気がするが、こちらに顔を向ける頃には顔の緩みは無くなり、真面目な顔になっていた。

そして私を持ち上げお姫様抱っこをしてきた。
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