御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
「え? いや、そういう意味ではなく、恥ずかしいので、ちょっと」

「騒ぐと、ほら、注目されていますよ」

彼に言われて周りを見ると確かに見られている。
恥ずかしくて彼の胸に顔を埋めた私を彼は人が少ない場所まで連れて行き、ゆっくりと降ろしてくれた。

「もう立てますか?」

「はい。すみません」

「いいえ。そんなにダメだとは思っていなかったので」

「落ちないってことは理論的には分かっているんですが、脳が錯覚しちゃって」

「でも一瞬下見ていましたよね」

「あぁ、はい。あれは私も働き蟻だなと考えていたらいつの間にか見ていて、言われて現実に引き戻されて腰抜かしました」

「そうでしたか。楽しませていただきありがとうございました」と全く弾まない声で言うと彼は歩き始めた。

本当に楽しかったのだろうか。まぁ、少なくとも私を小馬鹿にはしていただろう。

「ああ、そう言えば沢山の人に写真や動画を撮られていたのでそのうちSNSに出回るかもしれませんね」と彼は淡々と言った。

私は彼の胸に顔を埋めているのでどちらかと言えば彼に迷惑をかけてしまう事になるのだが、彼は大丈夫なのだろうか。
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