S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
浩平は朋久に向かって宥めるように手を振り、「ところで」と話を続けようとする。
「入籍はいつ頃を考えているんだね?」
「今日の夕方、菜乃とふたりで出してこようと考えてる」
昨夜、朋久は雅史に証人欄に署名をもらっている。
偽装はふたりだけの極秘事項。雅史にも内緒のため、朋久が菜乃花との結婚話をしたときの彼の驚きぶりは相当だったようだ。
しかし、それもそうだろう。菜乃花の母の墓参りのときに会ったときには、まったくそんな素振りがなかったのだから。
彼の反応をもっと詳しく聞きたかったが、朋久にはなんとなくはぐらかされた。
「いよいよ、なっちゃんが本当に私の娘になるわけだな」
感慨深く菜乃花を見つめ、満足そうに微笑む浩平を前にしてチクンと胸が痛む。お世話になっている朋久の両親を騙している罪悪感は、どんな理由を並べてもなくなることはない。
「はい、どうぞよろしくお願いします」
「今度四人でお祝いしようじゃないか」
「ありがとうございます」