S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
菜乃花は朋久と顔を見合わせた。
「噂のソースはここだったのか」
とはいえ、ほかに考えられる出所はないに等しい。ふたりの結婚を知っているのは、朋久の両親と藤谷親娘だけだ。
浩平によると、今朝出社してすぐ弁護士のひとりに『ずいぶんとご機嫌じゃないですか』言われ、口を滑らせて『じつは……』と話してしまったらしい。
「ちゃんと口止めしたんだがな」
浩平は困ったように頬をポリポリ掻いた。
「弁護士が揃いも揃っておしゃべりなのはどうなんでしょうね」
軽く釘を刺す朋久だが、本気で怒っているわけでもなさそうだ。わずかに笑みが浮かんでいる。
「めでたいニュースなんだからいいじゃないか」
「開きなおりか」
「まぁまぁ」