S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

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その日のお昼、菜乃花は里恵に外食に連れ出された。
お弁当は持参していたが、ふたりの結婚話で所内が騒然としているため、休憩室で食べてはいられないだろうと彼女が気を回してくれたためだ。

やって来たのはお馴染みのビストロ。案内されたテーブルに腰を落ち着け、ふたり揃ってオムライスを頼んだ。


「あの京極先生と菜乃花が結婚なんて、まだ信じられないんだけどー」


里恵は興奮冷めやらぬ様子でウエットティッシュの封を開け、手を拭いつつ続ける。


「でも、私には先に教えてくれてもよかったんじゃない?」
「ごめんなさい」


その点については謝る以外にない。


「言い訳に聞こえるかもしれないけど、今日話そうと思ってたの」


里恵には所内に公表する前に打ち明けようと考えていたが、予定外に先に知れ渡ってしまった。まさに今日のランチで話そうとしていたら、こんな事態だ。
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