S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「なに?」
「ううん、なんでもない。でもこれで朋くんには大きな貸しを作れたし、今度は私のワガママを聞いてもらおうかなー」
さんざんお世話になっている朋久に本気でそうしてもらうつもりはなく、あくまでも冗談めかして笑い飛ばす。
口をつけたワインは爽やかな口あたりだった。
朋久は「いただきます」と早速チラシ寿司を口に運ぶ。
「どうかな……?」
「うん、うまい」
続けざまに煮物にも箸を運び、「菜乃は料理上手だな」と褒めてくれた。
「よかった。あ、ところで教授さんはどうだった? 納得してくれた?」
戸籍謄本を前にして、どんな反応をしたのかまだ聞いていなかった。
「本当だったんだなって、しみじみ見てた。娘にも諦めてもらう以外にないって」
「そっか、よかった」