S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「菜乃は俺の妻じゃなかったのか?」
「それは戸籍だけで……」
「気が乗らないのなら無理にとは言わない」
「ううん、そうじゃなくて」
急いで首を激しく横に振る。
朋久は単にお礼のつもりで誘っているのだろう。でも、朋久とどこかに出かけられるのは同じ。彼の妻として出歩けるのだ、喜ばしいではないか。
お礼だろうとなんだろうとデートを楽しめばいい。
「じゃ決まりだな。どこに行きたいか考えておいてくれ」
「どこでもいいの?」
「菜乃が行きたい場所でいいよ」
好きな場所に文句なしに朋久と行けるなんて夢のよう。
(どこがいいかな……)
早くもワクワクしながらいろいろと思い浮かべる。
朋久はあっという間にチラシ寿司を平らげ、大根と鶏手羽元の煮物はおかわりするほど気に入ったらしく、普段以上の箸の進み具合だった。
菜乃花は例のごとく「太るぞ」と朋久にからかわれながら、彼が買ってきてくれたケーキをふたつ平らげた。