S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

「そうだったね。朋くん、あのときはカッコよかった」


ここが職場だと忘れて、うっかり普段の呼び方になる。

菜乃花の知っている朋久と違う顔をしみじみと知ったのはそのときが初めて。道端でキャッチセールスから女性を助けたときとはわけが違う。
弁護士としての誇りややりがい、これまでどのような案件に関わってきたのかを語る姿は、菜乃花だけでなくその場にいた全員の心を鷲掴みにした。

受講していた者みんなが、朋久に羨望の眼差しを向けたものだ。そして、そんな幼馴染みを持つ菜乃花自身、とても誇らしかった。


「あのとき〝は〟ってなんだよ。俺はいつだってカッコいい」
「自画自賛だ」


自信満々にする朋久が、ふふふと笑う菜乃花の頭を書類でぱふっとする。

瞬間見上げて合った彼の目が、わずかに揺らいだ。いつもなんの迷いもなく真っすぐ菜乃花に向けられる視線が、ほんの微かに。

しかし菜乃花が軽く首を傾げているうちにいつもの朋久に戻り、涼しげな笑顔になった。
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