S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

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その週末、里恵の彼氏、城下の号令でささやかな同期会が開かれることとなった。

同期のみんなと集まるから帰りが少し遅くなると伝えたら、朋久に場所や時間まで事細かに聞かれた。過保護というか、いつまでも子ども扱いされている証拠と言えるだろう。

残業になったためみんなに遅れること三十分、菜乃花が会場のイタリアンレストランへ急いで歩いているときだった。


「あれ? 菜乃花じゃないか?」


すれ違いざまに声を掛けられて足を止める。振り返ったそこには長身でスーツ姿のビジネスマンがいた。

(あれ? もしかして……)


(みつる)くん?」
「そうそう。やっぱ菜乃花だったか」


彼が人懐こい笑顔を浮かべる。
若槻充、菜乃花の父の従兄の息子、つまり菜乃花のはとこである。

同い年の彼とは中学も高校も一緒だったが、会うのは高校の卒業式以来。じつに六年ぶりだ。
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