S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「ひとり暮らし、できるだろう」
充に言われてハッとした。
これまで学生のときの流れで朋久のマンションに住まわせてもらっていたが、社会人になって久しく、お世話になる理由はたしかにもうない。
なにしろ菜乃花は彼の恋人でもなんでもないのだから。朋久が厚意で置いてくれているだけ。
今までそんな考えに至らなかったのが不思議なくらいだ。もしかしたら菜乃花自身、そこから目を背けていたかったのかもしれない。彼のそばにいたいがために。
「ほんとだね」
「ほんとだねって呑気だなぁ、菜乃花。アイツのほうもそろそろ迷惑なんじゃないか? なんなら俺が親父に頼んでアパートを探してもらおうか?」
迷惑という言葉が胸に突き刺さる。
自分の気持ち優先で朋久がどう考えているか、知ろうともしなかった。これでは子どもっぽいと彼に思われても当然だ。
「菜乃花?」
なにも返せずに言葉を失う菜乃花を充が不審がる。
「……あ、ううん、大丈夫。自分で探せるから」