S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「ついさっきタクシーで帰りました」
「そう。キミたちも送っていこうか」
「いえいえ、俺たちは電車で帰れますから。な? 里恵」
「うん」
恐縮して断る城下の腰はおかしいくらいに引けていた。
常日頃から『京極先生みたいになりたい』と語る城下は、憧れの弁護士を前にして目は泳ぐし早口だし、てんてこ舞いだ。里恵も赤ベコの人形のように首をコクコクとさせて何度も頷く。
「じゃ、菜乃、帰るぞ。キミたちも気をつけて」
菜乃花の肩を朋久がさり気なく抱くようにする。彼にしてみたらあくまでも子どもを守るような仕草のひとつに過ぎないのだろうが、エスコートの真似事みたいな仕草はそうそうされたことはない。
菜乃花は落ち着かない様子で里恵と城下に向かって両手を合わせ〝ごめんね〟と口パクしつつ、頭を下げて彼の車に乗り込んだ。
「迎えに来てくれるなんてどうしたの?」
シートベルトを締めながら尋ねる。
今夜のように食事で帰りが遅くなることはこれまでもあったが、迎えに来てもらったことはない。