S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

『帰ってる途中って、アイツも一緒なのか?』
「うん、迎えに来てくれて」
『……アイツと付き合ってるのか?』
「ま、まさか! 付き合ってないよ」


菜乃花にとっては刺激的な言葉だったためオーバーに切り返す。
朋久と付き合えるはずがない。彼は菜乃花を保護者の目線でしか見ていないのだから。


「着いたから切るね」
『あ、おい、菜乃花』


電話の向こうから充に呼び止められたが、無理に通話を終了させた。
車がマンションの地下駐車場に停車する。


「ごめんね、朋くん、騒がしくして」


充に妙なことを言われたせいで心臓はバクバクだ。朋久の恋人になれるわけがないのに。


「菜乃」


ふと、名前を呼ばれて彼を見る。
いつもと違うトーンの声だった。やさしくて、どことなく切ない。
そんな声色にドキッとさせられる。
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