S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
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バレンタインデーを翌日に控えた夜、菜乃花はキッチンでこっそりスイーツを作っていた。
朋久から今夜は遅くなると連絡があったため、心置きなく広げている。
料理はそこそこできるが、じつはスイーツはあまり作ったことがなく、前もってネットで必死にリサーチした〝サクサクコーヒーメレンゲ〟というクッキーを作ろうと奮闘中である。
チョコレートは使わないし、朋久がよく飲むコーヒー味だし、砂糖も控えめだから大丈夫だろうと結論に至った一品だ。小麦粉ではなく卵白を泡立てたものだから口あたりもサクッと軽く、スイーツ嫌いの朋久もひとつかふたつくらいなら食べてくれるだろう。
「よし、完成っと。どれどれ、お味はどうかな……」
オーブンから出したばかりのクッキーをひとつ摘まむ。
「熱っ」
まだアツアツのそれを構わず口に入れたら、サクサクと小気味いい音とともに口の中で溶けてなくなった。