S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「おいしい! もう一個いっちゃおうかな」
自画自賛して、さらにひとつパクッ。
(これならきっと朋くんも食べられそう。さてと、朋くんが帰る前に証拠隠滅しなくちゃ)
渡す前にばれたくない。もしも痕跡が見つかり〝俺はスイーツなんて食べないぞ〟なんて言われたら水の泡だ。当日にいらないと突き返される可能性もなきにしもあらずだけれど。
顔を綻ばせて飲み込み、急いで片づけはじめる。洗い物を済ませてラッピングまで終えたとき、キッチンカウンターの隅に置いていたスマートフォンが軽やかな音を立てて鳴りはじめた。
朋久かと喜び勇んで手にしたら見知らぬ番号からの着信。誰だろうと訝りつつ耳にあてると、すぐに向こうから声がした。
『菜乃花?』
「……あの、どちらさまで」
『なんだよ、俺だよ、充。この前掛けたのに登録してくれてなかったのか?』
充だった。前回話したときのまま、登録せずに放置していたことを今頃になって思い出す。充と会ったこともすっかり忘れていた。
「ご、ごめんね。ちょっとバタバタしてて」