S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
言い回しは丁寧なのに、どこか機械的。抑揚のない口調は、まるで招かざる客を相手にしているよう。
そもそも朋久と充がふたりで会って話すことがあるとは思えない。
(朋くん、どうしたんだろう)
普段、誰に対しても紳士的な朋久にしては珍しい。
「申し訳ありません。菜乃はたった今、バスルームに向かいましたので電話を替わることはできません」
(ええっ!? 朋くん!?)
菜乃花は朋久のすぐ目の前にいるのに。
朋久の静かな眼差しが〝黙ってろ〟と菜乃花に命じる。
「……ええ、承知しました。お伝えします。では、失礼」
朋久にとっても充は顔見知り。それなのに事務的にそう告げてあっさり通話を切ると、菜乃花にスマートフォンを返した。
そのままバスルームに向かう朋久を追いかける。
「朋くん、なんで? どうしたの?」
「ただいま」