みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
 諦めて、肩を落として出入り口からぼんやり外を見ていたら、斜め上から男の声が降ってきた。

「ほら、これ使えよ」
 目の前に差しだされたのは、黒の折りたたみ傘。

「おれ、すぐそこだから」

 声をかけてきたのは、見ず知らずの、明るい栗色の髪をした、若い男性だった。

「困ってんだろ?」
 
 突然のことで事態を呑みこめず、わたしは返事もできずにいた。

 するとその人は笑顔になった。
 なんともいえない安心感を与える、あたたかい笑顔を。

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