みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
 そういうなり、ベッドの近くにいたわたしの手を引っ張って、思わせぶりな上目遣いで見つめてくる。  

 同棲を始めて、そろそろひと月。

 お互いの部屋は狭かったし、かなりおんぼろアパートだったので、正職員になったのを機に、思い切って少し広いところに引っ越した。

 ただ、最近は仕事が忙しくて、部屋の片づけが後回しになっていた。

 今日は洋服の整理をしようと思ってたんだけど、ま、いいか。

 でも、すぐに言うこときくのもちょっとしゃくだし。

 わたしはわざと知らないふりをして、言った。

「試験近いんだし、もうちょっと頑張れば?」

「そんなつれないこと言わないで。一緒の休みってめずらしいだろ」

 なあ、なあと猫みたいに訴えてくる。

 まっ、いいか。

 わたしは微笑んで、自分から大洋に顔を寄せ、それから唇を重ねた。

                             (完)

*お読みいただきありがとうございました(*'▽')

参考文献
『男娼』 中塩智恵子 光文社
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