みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
「あの……」

 舗道についてから彼の顔を見ると、「あっ、ごめん。馴れ馴れしかった?」と手を放した。

 わたしは手に持っていた傘を渡し、頭を下げた。

「いいえ、あんなところで話しかけたわたしが悪かったんで。あの、本当に助かりました。ありがとうございました。じゃあ」

 そう言って、立ち去ろうとしたそのとき。

 わたしのお腹が「ぐーーーーっ」と大音量を発した。

 もう、なんて間の悪い……

 恥ずかしくて下を向くわたしを見て、彼はとても感じのいい笑みを浮かべた。

 ああ、この人懐っこい笑顔。

 あの日もそうだった。

 いっぺんに警戒心が解けてしまうような、あたたかな笑顔。

「腹、減ってんだね。おれも腹ペコ。良ければ、あそこでなんか食わない?」

 そう言いながら、今渡ってきたばかりの、道路の向かいにある居酒屋を指さした。
「えっと……」

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