みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
 何も聞きたくない。何も想像したくない。

 それでも、どうしてもふたりの姿が浮かんできた。

 大洋と隣の奥さんの嬌態を。
 歓びに打ち震えているであろう、彼女の顔が。
 
 でも、それが大洋の仕事なんだ。

 分かっているつもりだったけれど、実際は何も分かっていなかった。
 自分の浅はかさに呆れかえる。

 レストランが食事を提供するように、花屋が花を売るように。
 女性を精神的にも肉体的にも喜ばせることが、大洋の仕事。

 自分の恋心にすっかり浮かれて、見ないふりしていた現実。
 大洋を好きになるということは、そうしたことすべてを受け入れなければならないのに。

 もし仮に、大洋もわたしのことを好きだと思ってくれたとしても。
 できるのだろうか。そんなことがわたしに。


 眠れぬまま、ベッドの上に蹲って一晩を明かした。
 
< 74 / 132 >

この作品をシェア

pagetop