激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす


家に帰るまでの車内は無言だった。

千花は何か言いたそうにそわそわしていたものの、颯真はここで話をする気はなく、じっと口を引き結んだまま。
そんな彼の態度を察したのか、千花も話しかけてくることはなかった。

エレベーターで最上階まで上がり、玄関の扉が閉まった瞬間。颯真は千花を引き寄せて強引に唇を貪った。

「ん…っ!」

突然のことに顔を背けて逃げようとしたのを、腕に力を込めて阻止する。

靴も脱がずに壁に追いやり、ほのかにアルコールの漂う千花を囲い込む。何度も何度も角度を変え全てを奪うよに口づけて、彼女の抵抗を無力なものに変えていった。

「…っは、そぉ、くん…?」

立っていられない程くにゃりと身体の力を失った千花を抱き上げ、颯真は寝室へと進む。ゆっくりとベッドに彼女を下ろして隣に座ると、不安そうに見上げる千花の左手を取った。

「指輪は?」

普段よりも数段低く抑揚のない声が出た。自分の余裕の無さが恨めしい。

「え?」

一瞬何を言われたのかわからないといった表情の千花だったが、すぐに思い当たったのか「あっ」と小さく声をあげた。

< 100 / 162 >

この作品をシェア

pagetop