激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

拗ねた口調の割に颯真の手はなめらかに動き、するすると千花の服を乱していく。

「ちょ、颯くん…っ」
「これで子供でも生まれたらさらにライバルが増えるのか。…やっぱりあと数年は先でいいな」
「あっ…んん……」

ウィーンから戻ってきて以降、嫉妬や独占欲を隠さなくなった颯真から向けられる愛情に溺れそうになる毎日。

元々結婚してからは甘い態度の颯真だったが、弥生と再会して千花に構い出してからというもの、それにさらに拍車がかかった気がする。

その変化は嬉しくないはずがないものの、恥ずかしさに身の置き所がないのもまた事実で、千花は毎回顔を真っ赤にして俯くしか出来なかった。

「来週、バレンタイン、でしょ…?」
「え?あぁ、そういえば」
「颯くん会社でいっぱい貰うだろうけど、私からもあげたくて。明日はその試作もしようかなって…」
「千花以外からは貰わないよ」

首筋に唇が寄せられ、いよいよ濃密な時間の予感が近付く。こうなってしまえば颯真が待ってくれないことは千花も学習済みで、もう身を任せる以外に道はない。

「…作ったチョコ、職場にも持っていくの?」
「え?あ、うん。そのつもりだった、けど…」

職場に持っていく予定なのは簡単なチョコトリュフで、颯真には甘さ控えめのケーキを作る予定だった。

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