バカ恋ばなし
あれは高校2年生の9月頃でまだ夏の名残があったとある日、朝同じ車両に乗り込ん

だときのこと。電車がホームに入ってきて、ドアが開いた瞬間に、いつものメンバ

ーである私たち3人と譲二君、1号君、2号君が他の乗客に交じって勢いよく同じ車両

に乗り込んだ。そのとき、私は譲二君と向かい合わせの位置になった。

(やったあ!今日はラッキーだわあ!)

私は心の中でガッツポーズをしていた。譲二君がすぐ目の前にいる!お互いの間隔

は約20cm程。かなり接近している!

(うわあ……どうしよう……。)

恋する相手がすぐ目の前にいるだけでも心はときめいて、興奮ぎみになっている。

ただ彼の傍にいるだけなのに、心は晴れやかで嬉しさが込み上げてくるのを感じ

た。私は、顔がニヤけるのを何とか抑えて俯き、足元をじっと眺めながら嬉しさを

噛みしめていた。目の前に立っている譲二君の顔を、私は恥ずかしくて見れなかっ

た。もう胸がドキドキと鼓動が鳴りっぱなしだった。彼はどんな表情をして立って

いたのだろうか。そのとき、

「そういえば、丸ちゃんは好きな人がいるんだよねー!」

私の右隣りにいた佳子が突然言ってきた。

「えっ?!」

私はドキッとして顔を上げた。その直後にすぐ前方から思い切りドン!っと、強い

衝撃を感じた!譲二君が背後から押されて私に勢いよく私にぶつかってきたのだ。

私は押された反動から身体が後ろへよろけた。衝撃の強さからふらついて危うく後

ろへ倒れそうになった。

「えっ?!なになに?!」

私は突然の衝撃に驚きと嬉しが入り混じっていた。私は上目使いで前方を見た。譲

二君は少し照れた感じに笑っていた。

「なにすんだよ……。」

譲二君は1号君に向かって小声でつぶやいた。譲二君の斜め背後に1号君がニヤニヤ

しながら立っていた。そして譲二君に「だろ?」と言わんばかりに肘で譲二君の脇

をトントンと押していた。あれは1号君がわざと譲二君を押して私にぶつけてきたの

だ!「俺は何でもお見通しだぜ!」と、譲二君の後方からしてやったりの笑みを浮

かべていた。

(1号君、今日はあんたに感謝だぜ!)
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