バカ恋ばなし
それにしても佳子からの突然の一言にはホントにビックリした。佳子は車両での状

況を読んで、見事なアシストをしてくれたのだ。このことで譲二君に私の気持ちが

多少バレたのではないか。ぶつかってきたとき、譲二君嫌な顔をしていなくてよか

ったと、少しホッとした。

ギョロと出っ歯はその日は運悪く譲二君とはやや離れた場所に位置していた。この

状況を見ていたのか、二人は鋭い視線をこっちに向けていた。ホームに降りた時に

は、二人とも悔しいと言わんばかりにはっきり私のことを睨みつけながら通り過ぎ

ていった。

(へへーん!いいだろ!お前らよりも私の方がリードしているんだよ!)

二人よりも私の方が譲二君に近づいている!私は思いっきり優越感に浸っていた。

突然のハプニングに驚きと嬉しさで心はいっぱいになり、今まで以上にニヤつきな

がら、通学路であるT駅前商店街をテクテクと歩いていた。

「佳ちゃん、電車の中でびっくりしたよ!いきなりあんなこと言うんだもの。」

「だって、丸ちゃんとプリンスがかなり接近していていい感じだったからさあ。丸

ちゃん可愛く俯いちゃって。」

佳子は笑いながら言ってきた。

「丸ちゃんのところに、プリンスがいきなりぶつかってきて、あれは凄かったね

え。1号がわざと後ろから押したんだよ。ぶつかったときのプリンス、まんざらじゃ

ない顔をしていたよ。」

清子も今朝の状況を見て、譲二君の様子を教えてくれた。清子は私と少し離れた場

所に立っていて、車両内での一部終始をしっかり見ていた。清子の言っていた「ま

んざらじゃない顔をしていた。」の言葉が心にヒットしてかなり嬉しかった。まん

ざらではないということは譲二君は私のこと、嫌ではなかったのね!今朝はハプニ

ングがあったものの、今まで以上のワンダフルタイムを味わえた!とてつもなく嬉

しくて有頂天になり、この興奮は1日中続いた。

この一件から、良い方向へ思い込みと勘違いが増していき、譲二君への想いが増々

加速していった。


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