バカ恋ばなし
石家先生は大分環境に慣れてきたのか、初めて来た半月前よりもリラックスした感じが見えた。そして、嬉しいことに私のことを勤務中もよく“丸ちゃん”と呼んでくれるようになった。私が廊下であいさつすると、彼は笑顔で会釈をして手を振ってくれたり、「バーン!」と鉄砲を撃つジェスチャーをしてくれたり。そして私は左胸を押さえて「撃たれたぁ~」と後ろへ反り返って撃たれたジェスチャーで返してみたりと、そんなふざけたやり取り一つがとてもしあわせに感じてウキウキしていた。
「先生、だいぶ病棟に慣れてきたみたいですね。」
「ああ。まあ何とかね。まだまだ分からないことはあるけど。教授がいろいろ教えてくれるし、看護師さんたちがやさしくて良かったよ。みんな親切にしてくれるからね。」
「慣れてきてよかったですね。先生はスタッフだけでなく、患者さんたちからも人気あるから。」
「いやいや、何をおっしゃるやら。」
石家先生は少し照れながらもやさしい笑顔をこちらに向けて応えてくれた。
私は爽やかな笑顔でしかもやさしい口調で毎回受け答えをしてくれる石家先生に見とれていた。半月前と比べて彼と会話する回数も増えてきて少しずつ距離が近づいているように感じた。
(もしかして、向こうも私のことをちょっとは気にしてくれているのかな……なーんてね。)
そうやって勝手に都合良い思いを巡らすようになった。
「今度一緒に飲みに行きたいな……」























 
< 60 / 124 >

この作品をシェア

pagetop