snowscape~彼と彼女の事情~
長いメロディーコールが鳴り続ける
この曲は俺が大好きな曲で部屋で流れ続けている曲。
『旬、これなんて曲?』
俺の腕枕を好む茉莉は今日もその場所に頭を置いて甘い声を出して俺の顔を見上げる
『ん…“雨の理由”って曲』
『いい曲だね』
そして次の日、茉莉を呼び出すメロディーコールが変わっていた。
「早く出ろよ」
このメロディーコールが聞こえるのは、なぜか腹立たしい。
なんだか共有された気分になるから……。
もう少しでサビの部分が流れそうになった時俺は電話を切ろうと耳から放した。
「もしもし?旬っ?」
耳から放したはずなのに大きな声が電話に出たことを知らせてくれた
「あ、まり?今日逢えなくなったわ」
「え〜なんでっ!!」
「用事できた」
「用事って?」
これだから嫌だったんだ。
“女とカラオケに行く”とでも言ったら許してくれるとでも言うのか……
「俺、ジムに入ろうと思って」
「はぁ~?」
「はぁ?じゃなくて、別に俺が決めたことだし土曜にするから」
何よりも嫌いなのが自由を奪われること
それで、俺は今まで何人もの女を振ってきた。
自由を奪われるのが嫌だと言っても別にやましいことなんかしようと企んでいるわけでもないし、
元々、一人を好むだけ……
「じゃあ、いつ逢えるの?」
「日曜逢えるじゃん」
「毎週、日曜だけ?」
どうせ土曜の夜から来たとしても、俺の家でゴロゴロしてTV見たり、そしてお決まりのように迫ってくるだけ。
「不服?」
「ジム終わってからは?」
「疲れてなきゃ連絡するよ」
頭をグシャグシャにしながら、今にもキレてしまいそうな苛立ちを一生懸命抑えた。