snowscape~彼と彼女の事情~
「旬って本当に冷たいよね」
「そう?」
「せっかく今お風呂入って逢う準備してたのに……」
「ごめんな、また連絡するわ」
そう言うと、電話をきりタバコを加え火をつけるとため息と一緒に煙を吐き出した。
“旬って本当に冷たいよね”
毎回、毎回、付き合う女たちに言われる言葉。
じゃあ、温かいとはなんなんだろう……
それを教えて貰いたいくらいだ。
そもそも、俺のことなんて何も知りやしないのに一目惚れだとか
ずっと好きでしたとか……
その度に本当おもしれぇ〜と思ってしまう。
そして本当の俺を知って冷たいとか……
一体、何を求めてるんだと言いたい。
付きあって欲しいと望むから付き合っているのに。
何を勘違いしてるのか、どんどん欲ばかり大きくなってそれを押しつけようとする
「やってらんねぇ〜よ」
タバコを足で揉み消すと、携帯で隼人の名前を出し通話ボタンを押した。
「お、お疲れ♪」
「お疲れじゃねーよ、で?何時なの?」
「えっ?茉莉チャンOK出たの?」
「ば〜か、出るわけねぇだろ」
「大丈夫なのかよ」
「てめ〜が聞くな」
さっきの様子だと、絶対後からグチグチ言われるのを想像すると隼人に八つ当たりでもしなきゃやってらんなかった。
「じゃ、8時に待ち合わせだから7時半頃迎え行くわ」
そう言うと俺の返事も聞かずに「じゃあ」と一方的に電話を切った。
何を急いでいるのか……
それとも俺のイライラをぶつけられるとでも思ったのか。
間違いなく後者だろうけど、隼人らしくてなぜだか笑った。