意地っ張りな恋の話
「な、どういう、っ!」
声を出すとまた咳が止まらなくなった。
ぽんぽんと一定のテンポで背中をさすり続ける手に、やけに嫌悪感を感じた。
「悪いこと言わないからさ、絢くんから離れな。なんなら俺と付き合う?
俺割とゆりちゃんのこと好きだよ」
「…ふざけないで」
自分でもびっくりするくらい不機嫌な声だった。
ねえちゃんのもの?
誰のものだか知らないけど、その言葉に腹が立って仕方なかった。
「…どいて、帰る」
「大人しく帰すと思う?」
「…おいこら兄ちゃんええ加減にせぇよ」
「ええ加減…」
「はっきりした言葉使わずにのらりくらり人のこと弄ばないで
さっさと帰って宿題でもしてな」
あたしの言葉遣いに面食らった顔をする、
その表情を見て少しだけザマアミロと思ってしまう。
怯んだ隙にぱん、と手を振り払って脇目も振らず走って逃げた。
「なあ、ゆり、」
背中に投げつけられたあたしを呼ぶ声は、聞こえないふりをした。