【新装版】BAD BOYS
我ながら素っ気ない返事だな、と思う。
会いたくない……は、ちょっと違う。そこにあるのは自分の意志じゃなくて、ノアの意志。彼が嫌がるから、会いたくない。
わたしとノアは、元々同じ中学校の先輩後輩だった。
彼はふたつ年上だから、同じ学校にいたのはわずかに1年だけ。その1年で完全にノアを好きになってしまったわたしは、『花舞ゆ』にいた、彼と親しい知り合いを通じて連絡を取り続け、そして。
転校することがわかった、中学2年生の終わり。
わたしは思い切ってノアに告白し、その答えは今付き合っている通り「いいよ。付き合う?」だった。
でもノアは、わたしが『花舞ゆ』のメンバーと親しくするのを良く思っていなくて。
付き合ってもいいけど、あのメンバーとはもう関わらないで、と言ってきたのだ。
正直、おどろいた。
そもそもわたしが『花舞ゆ』のメンバーと親しい理由は、今もリーダー格であろう男が、わたしの幼なじみだったから。
だからわたしはみんなとも親しかったし、たまり場にもよく入り浸っていて。
『花舞ゆ』は、紛れもなく"與 はなび"の居場所。
けれどノアは、それを捨てろって言う。
みんなとは当然離れたくなかったけど、でも、わたしにとってノアはとても特別で。
今このチャンスを捨てたら、もう二度と付き合えないことが分かっていたから。
だから。……転校を言い訳にして、わたしは『花舞ゆ』のみんなのことを裏切った。
ノアが嫌がるから。
そんな、自分勝手な事情で、裏切った。
みんなのことは好きだ。ノアのことも。
付き合った当時は今みたいな劣等感も無かったし、転校したから遠距離になってたけど、ノアは何度かわたしに会いに来てくれた。
だから本当に、後悔は、まったくない。
彼らのことを惜しむ気持ちはあるけど、わたしはもう、ノアに二度と別れを切り出せないと思う。
だって彼は。……彼は。
『はなび、まだノア先輩と別れてねえの?』
もうわたし以外の誰にも、縋れないから。