【新装版】BAD BOYS
冗談の脅しならまだしも、椿だったら本当に待ち伏せする。絶対やる。
そうすれば彼が『花舞ゆ』のメンバーであることがバレるのは時間の問題だし、噂が噂でないこともバレてしまう。本当に美形揃いだし。
わたしが『花舞ゆ』のメンバーと知り合いだと学校中にバレるのもめんどくさい。
桃だって、この話はわざと声をひそめて話してくれたわけだし。仕方ないかと、スマホに番号とアドレスを登録する。
メールを作成しようとしたタイミングで、チャイムが鳴って。
担任の先生がホームルームに来たけれど、机の下に隠して『登録した』の一言だけを打つ。
それから、本文の下に『與 はなび』の文字を添えて送信すれば、数分してからバイブレーションが鳴る。
またもや先生の目を盗んでメールを開くと、送られてきたのは返事ではなくメッセージアプリのQRコード。
……はじめからアプリの連絡先を、桃に教えてもらえばいいのに。
待ち伏せする、なんて脅しはするくせに、そういうところでわたしの意思を尊重してくれるのが謎すぎる。まあいいけど。
コードを読み取って『阿鷹 椿』を登録し、スタンプだけ送り付ける、という一連の流れを済ませたところで。
ようやく『元気にしてた?』と彼からの返事がきた。
立て続けに、『いつからこっち?』と主語のないメッセージ。
それでも通じてしまうのだから、過ごした時間の長さは侮れない。
元気にしてた?という一言はスルーで、『2ヶ月前』とだけかえす。
わたしは元々、『花舞ゆ』の存在するこの場所に、中2の最後まで住んでいて。
中3のはじまりから高1の終わりまでは、転校で地元を離れていた。
けれどやっぱりここに戻りたくて両親を説得し、高2の春からようやくここへ戻ってきたわけだ。
それが今の一人暮らしのマンションで、わたしに甘いお父さんは、お値段高めだけどセキュリティの優れたところを選んでくれて。
お母さんは女性専用マンションにしてほしいって言ってたけど、それじゃノアを呼べないし。
『そっか。今日の放課後ひま?』
『暇じゃない。なんで』
『暇じゃないって……
2年ぶりなんだから顔ぐらい見たいし。昨日写真は見せてもらったけどちゃんと会いたい』
『わたしは会いたくない』