【新装版】BAD BOYS
「人聞き悪いこと言うんじゃねえよ~。
ずっとお前の後ろ歩いてただけでしょうに」
「それを"つけてた"って言うんでしょ」
わたしは会いたくない、と言ったはずだ。
ノアと別れていないことも、ちゃんと返事したのに。
「……まあ、つけてたけどさあ。
これでも俺、はなびに迷惑かけねえように、って。学校近くでは声掛けなかったんだけど」
……そういうことじゃなくて、と。
どうせ怒ったところで、聞いてはくれないんだろう。促されて、ファストフード店に立ち寄る。
席に着いて、奢ってくれたバニラシェイクをストローで吸った。
冷たい感触のあとに、舌に広がる甘さ。……椿のことだから、わたしがこれを好んでたのも覚えてたんだろう。
じゃなきゃ、迷わず注文しないだろうし。
「……相変わらずその色なのね、髪」
「ん〜? これ、きらい?」
「べつに。椿らしくていいんじゃないの」
ふわり。
わたしの言葉に笑ってみせる彼の髪色は、なんとも奇抜なコバルトブルーだ。どこにいても目立つし、覚えやすくていいと思う。
まあこんなにも色気のある男の顔を忘れる人なんて、そういないだろうけど。
「……で、要件はなに?」
机に肘を乗せ、頬杖をつく。
あからさまに嫌そうな顔をするわたしにも、椿は一切表情を変えない。それどころか。