【新装版】BAD BOYS
……とはいっても、本当に休むわけにはいかず。
今日はやたらと甘い気分にさせてくるノアも、わたしが家を出たと同時に、帰っていった。
「おはよー、はなび」
教室にたどり着くと、いちばんに声を掛けてくるのはド派手なピンクのツインテール。
普通なら一歩引いちゃいそうな容姿も、この子にはよく似合ってる。はじめて見た時、別次元から出てきたんじゃないかとありえないことを思ったものだ。
「おはよ、桃。杏子も」
「おはよう。……寝不足?」
さらさらの黒髪ストレート。
前に染めないの?と聞いてみたけれど、染めるお金も、染めたせいで傷んだ髪をケアするお金ももったいないと顔を顰めていた。
さすが、バイトに徹する彼女らしい理論だ。
べつに金欠なわけでも買いたいものがある訳でもないのに、どういうわけか「将来のための貯金」らしい。なんて安泰な。
「ん……ちょっとね」
「はなびが寝不足って、彼氏さんでしょー?」
むー、と頬をふくらませる桃。
本名は羽藤 桃子なんだけど、どうも「モモコ」って呼ばれるのは嫌いらしい。
そして、羽藤 杏子。
桃の双子のお姉ちゃんで、本当に同い年なのか疑うくらいにしっかりしてる。基本的にマイペースでだらしないタイプの桃は、よく杏子に怒られてるけど。
「まあ……原因は彼氏だけど」
「ただのノロケじゃん……!
朝方までベッドで言えないようなことしてただ、むぐっ……」
お願いだから、朝っぱらからそのテンションでボリュームを抑えずに過激なことを言うのはやめてほしい。
このままじゃ暴走しかねないから桃の手を口で塞いで、「ノロケじゃないから」と一蹴する。