魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
次の日、ライトは王都へと戻る。二年前、レインの母親がレインを連れて出て行こうとしたときには、あれほど離れたくないと思っていた妹なのに、今はここに置いていくことに反対はなかった。それは、今は妹をあの場所に置いておく方が危険であると判断したからだ。
レインの魔力無限大という話は魔導士団にとってもちろん周知の事実。さらに、魔法研究所でさえ研究したいという声さえ聞こえていた。
その彼女の魔力が喪失した、という話が広がれば、魔導士たちの好奇の目にさらされ、さらに彼女の魔力をうらやましく思っていた人たちからの攻撃の対象になることも容易に想像できる。さらに、研究所の研究対象という声も上がるだろう。
今は一緒にいないことが彼女を護るための最善の策である、とライトは思っていた。
ライトは愛馬にまたがった。ここでの移動は主に馬だ。転移魔法という魔法もあるらしいのだが、らしいという程度で実際にお目にかかったことはない。魔導士団長であるトラヴィスでさえ使えないと聞いている。もちろん、自分も使えない。ということは現在、この国でそれを使える者はいないのではないだろうか。
「お兄様」
レインが駆け寄ってきた。
「お兄様。本当にありがとうございます。私、立派な薬師になってお兄様の元に戻りますね」
「ああ、待っている」
ライトは馬上から手を伸ばして、レインの頭を撫でた。
「いつもお兄様に助けてもらってばかりです。だから、次は私がお兄様を助けるようになりたいのです。だから、待っていてください」
「ああ。そのときを楽しみにしている」
ライトは「必ずレインを迎えに来る」と言って馬を走らせた。
小さくて弱くて、そして可愛くて。そんな妹が自分を助けるようになりたい、とまで言ってくれた。自分は、兄として妹をずっと守りたい続けたいと思っていたのに。
妹自身が守られ続けることを拒んでいる。
そんな妹をトラヴィスに渡してしまうのはやはり惜しい気がしてきた。
レインの魔力無限大という話は魔導士団にとってもちろん周知の事実。さらに、魔法研究所でさえ研究したいという声さえ聞こえていた。
その彼女の魔力が喪失した、という話が広がれば、魔導士たちの好奇の目にさらされ、さらに彼女の魔力をうらやましく思っていた人たちからの攻撃の対象になることも容易に想像できる。さらに、研究所の研究対象という声も上がるだろう。
今は一緒にいないことが彼女を護るための最善の策である、とライトは思っていた。
ライトは愛馬にまたがった。ここでの移動は主に馬だ。転移魔法という魔法もあるらしいのだが、らしいという程度で実際にお目にかかったことはない。魔導士団長であるトラヴィスでさえ使えないと聞いている。もちろん、自分も使えない。ということは現在、この国でそれを使える者はいないのではないだろうか。
「お兄様」
レインが駆け寄ってきた。
「お兄様。本当にありがとうございます。私、立派な薬師になってお兄様の元に戻りますね」
「ああ、待っている」
ライトは馬上から手を伸ばして、レインの頭を撫でた。
「いつもお兄様に助けてもらってばかりです。だから、次は私がお兄様を助けるようになりたいのです。だから、待っていてください」
「ああ。そのときを楽しみにしている」
ライトは「必ずレインを迎えに来る」と言って馬を走らせた。
小さくて弱くて、そして可愛くて。そんな妹が自分を助けるようになりたい、とまで言ってくれた。自分は、兄として妹をずっと守りたい続けたいと思っていたのに。
妹自身が守られ続けることを拒んでいる。
そんな妹をトラヴィスに渡してしまうのはやはり惜しい気がしてきた。