最愛ジェネローソ
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「とうとうか! 彼氏とお泊まりデート!」
会社の給湯室で叫んだのは、同僚の森緒ちゃんだ。
今、2人で、午前10時に職員さん人数分のコーヒーを入れにきたところだった。
そこで森緒ちゃんから、不意に世間話を投げられた自分は、真面目に報告をしてしまったのである。
何も律儀に「ゴールデンウィークに彼氏と1泊旅行に行くことになった」などと、事細かく説明する必要はなかった筈なのに。
森緒ちゃんは分かりやすく、ニヤニヤしている。
自分が、あまりにも軽率だった。
「じゃあ、きちんと準備しとかなな!」
「な、何を……?」
尋ねつつも、答が分かってしまう自分が、全く嫌になる。
森緒ちゃんは、妖しく笑う。
「セクシーな、もしくは、それはもう可愛い可愛い勝負下着! それ以外に無いやろ!」
「そっ、それは大丈夫」
答が分かっているから、余計に挙動不審になってしまった。
両手を前に突き出し、必死に否定しておく。
そんな自分を疑ってかかる森緒ちゃんは、更に詰め寄る。
「大丈夫って、どういうことよ? もうすでに準備してあるん?」
「準備なんてしてないけど……。自分たちは、そういうことが無くても、一緒に居るだけで十分な関係やと思うから」
「ええ?」
「彼は誠実で、硬派っぽい雰囲気やから、はっきり言って性欲とか薄い方やろうし……。自分がこんなんやから、そんな気持ちにもなりにくいと思う」
すると、何故か森緒ちゃんが、頭を抱えた。
「彼氏、可哀想……。これは、これから苦労するぞぉ」
「こ、この先は努力するよ。だって、将来、子どもは欲しいと思っとるし」
「努力ぅ?」
「しっかりダイエットとか続けて、自分に自信を持てるように――」
「何億光年、かかるんだ! それはぁ!」
「ひぃっ。すいませんん!」
自分にとっては、なかなかにきつい冗談だ。
すると、突然に自分の肩を掴んだ森緒ちゃんは、真剣な顔で言った。
「いい? 華。大概の男性はね、多少肉付きの良い女性を好むの。その上、惚れ込んだ女性の体なら、よっぽどのことがなければ、綺麗に映るんやから」
「そ、そうなん、かな……?」
「そら、そうに決まってるでしょうよ!」
いまいち信じることが出来ず、小さく唸る自分の背中を強めに一叩きされる。
「しっかり自信持ちなさい!」
そこまでしてもらっても、未だに怖じ気付いてしまう。
そうして、それぞれの要望通りのコーヒーを人数分入れ終わり、2人で給湯室を後にした。