最愛ジェネローソ
「よし君……?」
「ずっと好きで、好きで堪らなかった人と一緒に居られて。なんか、まだ夢見てるみたい」
まるでドラマの台詞の様で、自分には現実味が無い。
それなのに、相変わらず彼の切ない視線が、真っ直ぐこちらに刺さる。
堪えきれず、自分の方が目を逸らすしかなくなる。
ついでに、話題も逸らしてしまおうと試みた。
「お、お布団。どっちで寝る?」
「俺は、どっちでも良いよ」
よし君のその返事を聞いて、逃げる様に片方の布団へと先に潜り込む。
「えっ。華さん、もう寝るの?
「えっ。よし君も疲れてない? たくさん歩いたし……」
「えっ。いや、俺は平気、だけど。そっか、華さん、疲れちゃったね」
「まっ、まぁ、程々に?」
「そっ、そっか」
既に、ちゃっかり布団に収まっている自分に、よし君は開いた口が塞がらずに居るようだ。
「よし君、まだ起きてるなら、電気付けておいても大丈夫だから……」
「いや、俺も、もう寝ようかな」
自分が背を向けて横たわっている後方の布団でゴソゴソと、彼も布団に潜り込む音が聞こえた。
自分たちの関係なら、お互いが現状に満足している筈だから、このまま眠って、また明日も楽しく観光をするだけだ。
そう思い至っているのに、目が冴えまくって眠れない。
思いと気持ちが、全く別の所にあるから、自分自身は納得していないことに、今更ながら気が付く。
それを、ついさっき理解した。
でも、よし君なら、この穏やかな関係で、きっと幸福だと言ってくれる。
だって、よし君はそんな素振り、今まで見せたことが無いから。
でも、自分は――。
――……どうしたいんだろう。
さっき、触れられた頭が疼いて、そこにそっと手を添える。
――もっと触れられたい。
まさか自分に、そんな欲張りな感情があるとは思わず、ぎょっとした。
――でも、これが、きっと本心なんだ。
博物館の中で、急に側に寄りたい、触れたい衝動に駆られたのも、きっと同じ理由からくるものなんだ。
こんなの、引かれたりしないか、心配だ。
彼に背を向けていた体勢から、寝返りを打った。
すると、その物音で、よし君は瞑っていた瞼を開け、こちらを気にかけてくれる。
「どうしたの? 寝付けない?」
自分が頷くと、彼は優しく微笑んだ。
「一緒に、こっちで寝る?」
いきなり、それはハードルが高いと、勢いよく横に首を振る。
その反応に、よし君はクスクスと笑ったかと思うと、自身の掛け布団をそっと捲った。
「おいで」
エレベーターの時と言い、今と言い、自分を飼い猫だと思っているのではないだろうか。
そう思っているくせに、戸惑いながらも素直に従う自分も、よっぽど可笑しい。
よし君に背中を向けて、同じ布団に入り込んだ。
「なんで、背中向けるの」
また彼はクスクス笑っていても、両腕で抱き締めてくる。
その笑った吐息が耳の後ろにかかって、こそばゆい。
その腕は筋張っていて、力強くて、自分のものとは、全く比べ物にならない程だ。
背面全部が、ぴったり彼と触れ合っていて、今までの手を繋ぐ、頭に触れられるとは、動悸の度合いも全く違う。
――好奇心だけで、大変な所に飛び込んでしまった、かもしれない。