最愛ジェネローソ
「ごめん。俺、華さんにそんなことがあったなんて、全く知りもしなかった。あいつは頭の中が、中学生から変わってないんだな」
「……あと、頬から顎まで撫でられたりもして『反応が面白くなったな』とか、気持ち悪いことも、言われた」
「あいつ……」
話を聞いているだけで、腸が煮えくり返りそうだった。
奴の行動は同性が聞いていても、非常に気分が悪くなる。
「俺は、あいつとは違うから大丈夫。華さんの嫌がることなんて、絶対にしない。したくないから。……あと、俺に申し訳ないなんて、思わなくていいよ」
努めて、優しく声を発する。
彼女を出来るだけ、怖がらせないように。
「……ゆっくりでいい、その怖さが消えるまで。俺、華さんのこと、本当に大切にするから。……一生守らせてほしい」
俺の腕の中で、華さんの強張っていた身体が、吐息とともに、ようやく解けていったようだった。
彼女のしがみつくようなその微かな力強さに、俺の中の「守りたい」という願いが、迷いのない真っ直ぐな熱へと変わっていく。
「よし君。ありがとう……」
涙を浮かべて、静かに笑った華さんの瞳。
そこにあるのは、俺を心から信頼してくれているように感じ取れた。
俺は様子を伺う様にゆっくりと顔を近づけ、彼女の唇を塞いだ。
一度、二度、触れるだけだったキスが、次第に深く、熱を帯びていく。
旅館で止まってしまった時間が、今、二人の意志で動き出そうとしていた。
「……華さん。いい……?」
俺から尋ねると、華さんは小さく頷く。
俺は、彼女をそっと押し倒した。
ブラウス越しに伝わる、彼女の柔らかな体温と、トクトクと刻まれる鼓動。
欲が、深い慈しみと共に、かつてないほど激しく脈打っている。
彼女のブラウスのボタンに手をかけ、指先が微かに震えた。
いよいよ、彼女のすべてを愛で満たそうと、覚悟を決めたその瞬間だった。
――ブブッ、ブブッ、ブブブブッ。
無機質な、けれど執拗な振動音が、幸せな熱を切り裂くように響き渡った。
まただ。
今日一番の激しいバイブレーションが、すぐ隣に置いてある華さんのバッグの中から、空気を引き裂くように響く。
無視しようとした。
けれど、それは執拗に震え続ける。
朝からずっと溜まっていた気掛かりが、ついに俺の我慢の限界を超えた。
「……華さん。今日、ずっと鳴ってるけど、大丈夫?」
俺は唇を離し、乱れた息を整えながら、尋ねた。
華さんは少し顔を赤くしたまま、慌てて視線を逸らす。
「え、ああ、うん。大丈夫だよ。きっと、アプリの通知か何かだから……」
「本当に? 華さん、さっきから何度も携帯を気にしてたし。余計なお世話かもだけど、例えば、誰かから嫌な連絡が来てるとか」
俺の必死な表情に、華さんは観念したようにバッグから携帯を取り出した。
彼女は画面を確認した後、消え入りそうな声で口を開いた。