【書籍化】利害一致婚のはずですが、ホテル王の一途な溺愛に蕩かされています
まずい、どうしよう。とりあえず心を落ち着かせるために、ジョッキに残るビールを飲み干し喉を潤す。

「言ってないのね」

それだけで伝わる彼女はさすがだ。みゆきは焼鳥をつまみながら苦笑い。

「言ってない。言えるわけないよ……」

両手で顔を覆い大きく息を吐いて、仕方なく現実に戻る。

考えないようにしていたけれど。――そう。

私には、破局以上に困ったといえる問題がある。

それは、私の結婚をいまかいまかと待ち詫びる、極度の心配性の母がいることだ。

『引っ込み思案の咲笑は、将来が心配よ!』が口癖で。
ここ近年は『彼氏との結婚はまだなの?』『見込み無いなら、友達の息子さんと会ってみない?』が口癖の母。

トモキと交際しているにも関わらず『咲笑の写真見せたら気に入ってるの』と勝手に私の写真を友人の息子さんたちに見せ回ったり、『とりあえず会わない?』と何度も会わせたがる非常識な母だ。

長年大手企業の敏腕営業職だったのも手伝って、友人関係が広く、とても社交的。持ってくる写真の数は数え切れない。
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