【書籍化】利害一致婚のはずですが、ホテル王の一途な溺愛に蕩かされています
「いいのよ。陵介も私も咲笑が来てくれて、本当に助かっているんだから」

夢心地で赤い絨毯を踏みしめる私を見て、お嬢様のみゆきは「まだ言ってるの」となんてからかう。一般人の私からすれば大事(おおごと)なのに。

結局のところ、みゆきの言うとおり旅費(参加費)は陵介くんの厚意によっておごられてしまった。

さすがに高額であるため(私からすれば)、後日みゆきと3人で食事した席で、費用を支払おうとしたのに『これくらい気にしないでよ。逆に咲笑ちゃんに参加してもらえて助かってるんだ』なんて言って頑なに受け取ってくれず。

それどころか『新しい出会い見つけておいで』なんて気遣われてしまった。陵介くんには本当に頭があがらない。

新しい出会い……か。

ふと、退職の日まで一言も話すことのなかった、幸せそうトモキの横顔が頭をよぎる。呆気ない終わり方だった。


✳✳✳

――午後三時。早めにチェックインを済ませ、洗練されたホテルマンに部屋まで案内してもらう。

あてがわれたツインルームは、シンガポールの美しい夜景を連想させる、シックなカラーを基調としたエレガントな客室だった。
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