【書籍化】利害一致婚のはずですが、ホテル王の一途な溺愛に蕩かされています
受け取る気配が無く「みゆき?」と彼女がいるはずの方向へ首をぐるりと回す。

しかし、たった今まで会話をしていた彼女の姿はそこにはなく。

ぐるりと首をひねってラウンジ内を見渡すと、数歩後方で立ち止っている彼女を確認。

私の視線に気づかずある一点を見つめたまんまだ。

ん? あれは……

視線の先には……ついさっき会場入りしてきた陵介くん。彼の周りには綺麗な女性が五、六人ほどいる。

いつも自信に満ちた、魅力的な猫のような大きな瞳がどんよりと影を作っていく。私の胸までズキンと痛んだ。

彼女が今何を思い、何を考えているのか手に取るようにわかってしまう。

「みゆき……?」

咄嗟に声をかけてしまった。ハッと我に返った彼女はこちらに笑顔を作る。

「あーー、ごめん、もしかして声かけてた? なんかぼーっとしてたみたいで」

こころなしか陵介くんも、チラチラこっちにSOSのサインを出しているような気がするけれども。みゆきは背を向けてしまう。

「やっぱり会場がグランツってだけでゴージャスよねぇ」なんて取り繕いながら私よりも先を歩き出し、無理矢理世間話をはじめる。
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